グローバリゼーションと拡大CSR

執筆者:平野克己2010年11月28日

 あれほど落ち込んでいた日立グループの業績が、今年に入ってから好調だ。この好調を支えている柱に新興諸国を対象としたインフラ輸出や建機販売があるが、日立はアフリカでも善戦している。大型発注が今後数年にわたって続く南アフリカの発電所建設を初回から受注しているし、南アフリカでは原子力発電所建設の可能性も視野に入っている。日立建機はザンビアにメインテナンス基地を開設、アフリカ全土への拡販体制を整えた。

 その日立が南アフリカでの受注成功に際して課せられた条件のひとつが、自社雇用とは別に、1400人にも上る電力関係技能工の養成であった。40%の実質失業率に苦しむ南アフリカで、雇用創造への貢献を求められたのである。黒人の経済力向上に対する貢献策を用意できたことが、日立の強みとなった。

 以前紹介した日本最大のアフリカ投資、マダガスカルのアンバトビープロジェクトにおいては、広範な地域開発が並行して行われている。ニッケル精錬工場を建設するため立ち退いてもらったコミュニティのため、家屋と農地を一村分まるまる用意した移住先を建設、そこに学校や病院を建て、そこで働く教師や医師もプロジェクトで雇用している。
 アンバトビープロジェクトには現在、鉱山開発および鉱産物搬出のための道路とパイプライン建設でおよそ1万人が雇用されているが、これだけの数の人間がいっきに集まってきたことでこの地域のインフレ率が14%になり、全国平均の10%を上回ってしまった。現地にあるプロジェクト本部はその差4%を解消するため、まず食品産業を地域に興す計画である。いずれは農業振興も視野に入ってくるだろう。建設事業の労働需要が減っていくに従い、新たに興した産業で雇用を生み出し、プロジェクト全体での雇用水準を維持するとしている。

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