迷走するイトーヨーカ堂銀行構想

執筆者:須田慎一郎2000年1月号

 昨年末、異業種の銀行参入として、脚光を浴びたイトーヨーカ堂の新銀行構想が、ここに来て大きな壁に突き当たっている。金融監督庁の許可の見通しが立たない中で、銀行業界からは計画の杜撰が指摘され、さらにヨーカ堂の“内部分裂”も表面化しつつある。

「金融監督庁の対応は、まさに“ナシのつぶて”という状況です……」

 イトーヨーカ堂関係者はこう不安を口にする。

 流通業界の雄、イトーヨーカ堂が、金融監督庁に対して新銀行設立のための“趣意書”を提出したのは、昨年十一月二十九日のことだった。

 これ以降、本稿を執筆している今年一月中旬に至るまで、金融監督庁とイトーヨーカ堂は、新銀行設立の件に関して一切、接触を図っていないというのが実情だ。より正確に言うならば、金融監督庁が前述した“趣意書”に対して現状では何のリアクションも示そうとしないのだ。そして、こうした金融監督庁のあまりの無関心ぶりに、イトーヨーカ堂サイドはしびれを切らしている、とみられるのである。

「そうは言っても、その“趣意書”なるものの内容があまりにも杜撰で、具体的に検討しようがない。つまり、趣意書としてまったく“水準”に達していない代物なのです……」(金融監督庁幹部)

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