情報技術と並び、アメリカの二十一世紀の“戦略物資”である農作物をバイオテクノロジー。その両者の産物である「遺伝子組み換え作物」に世界中から反発の声が上がっている。アメリカはどう対処しようとしているのか。

[ワシントン発]昨年十一月、世界貿易機関(WTO)の閣僚会議が開かれたシアトルの街を大混乱に陥れたデモ隊が、とりわけ激しい抗議の的にしたのは、遺伝子組み換え作物(GMO=genetically modified organisms)だった。害虫や病気への耐性を高めるべく遺伝子を組み換えた作物のことだ。

 プラカードには、「GMOは蝶を殺す」「食品汚染だ」といった言葉が並び、抗議行動に出た人々は、WTOがGMO種子およびGMOを含む食品の貿易を全面的に禁止することを要求した。かつてはアメリカの輝ける未来の戦略農業物資と見られたGMOに、世界的な逆風が吹き始めたともいえる。今や政治問題と化したGMO問題に、アメリカ政府はどう対処しようとしているのだろうか。

 この問題が国際政治の表舞台に躍り出たのは、この一年ほどのことだ。

 昨年六月、ドイツのケルンで行なわれたG8(主要八カ国首脳会議)に先立って、クリントン大統領とデビッド・アーロン商務次官はGMOに対する取り組みを協議していた。というのも、この頃すでに、遺伝子を組み換えたアメリカ産のトウモロコシや大豆の輸入に欧州各国が抵抗を示し、イギリスのタブロイド紙や環境保護団体などが、GMOを「フランケンシュタイン・フード」と呼ぶようになっていたからだ。こうした抵抗によって、トウモロコシの輸出は年間二億五千万ドルも減っていた。

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