「台湾安保強化法案」が米下院を通過したことで、米中台の三者関係はぎくしゃくしはじめている。果たしてアメリカの「コミットメント」とは何か。実質的な「駐台湾大使」を務めるブッシュ氏に聞く。

 二月一日、「台湾安全保障強化法案」が米下院を通過した。三百四十一票対七十票という大差での可決だった。法案には、米軍高官が台湾軍の高官とより緊密に連絡を取ることや、両軍を通信網で結ぶこと、「台湾防衛上のニーズ、および台湾が攻撃された場合アメリカはどう対応できるか」について、政府が定期的に議会に報告すること、などが盛り込まれている。

 同法案の審議は、もともと実質的というよりもシンボリックな意味合いの方が強いのだが、ホワイトハウスを筆頭に反対の声は根強い。その理由は、米台防衛協力を明文化すれば、一九七八年の米中国交正常化声明以来、微妙に保たれてきた米中台三者間のバランスが崩れる危険がある、というものだ。

 同法案が上院を通過するかどうかは、今のところわからない。仮に通過したとしても、クリントン大統領が拒否権を発動する可能性もある。

 だが、時は折しも台湾総統選(三月十八日)の前哨戦のまっただ中。それでなくとも台湾の選挙シーズンになると、中国は武力をちらつかせてきた。「台湾安保強化法案」がたとえ最終的には成立しなくとも、中国を刺激することは間違いない。現に、法案の下院通過の翌日、中国の楊潔チ外務次官はプリアー駐中国大使を呼び、「中国の主権への粗暴な干渉であり、二つの中国を創り出そうとしている」と抗議した。

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