パキスタンの「核開発の父」と国民から尊敬されているアブドゥル・カディル・カーン博士が巨額の核開発資金を個人的に流用していた疑いで先ごろ、軍政当局の取り調べを受けていたことが分かった。

 イスラマバードの消息筋が明らかにしたもので、博士の知人なる人物が当局にひそかに提出した関係書類から、博士が過去四、五年にわたり、核開発用資金の一部を自分の資産形成のため、海外の株や債券購入に充てていた疑いが強まったという。

 博士はパキスタン核開発の中心人物で、一九九八年にインドに対抗して実施した地下核実験を成功させた最大の功労者。長年、核開発用資金の運用を政府から一任されてきた。取り調べは今春五回以上行われ、黒白が判明するまで博士は自宅謹慎を命じられたものの、身柄は拘束されていない模様。

 ただ、博士を告発した知人については「インドから移住したイスラム教徒で、博士を失脚させることでパキスタンの核開発計画を混乱させようとするインド情報機関のスパイだった」(別の消息筋)との見方もある。この知人がその後行方をくらませていることも、スパイ説に信憑性を与えている。

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