「株主重視型企業」金融ランキング

執筆者:中村雅文2000年5月号

 事業としての特殊性ゆえに金融セクターは一〇〇位ランキングから除外した。だが、TSRとROEを用いて金融セクターだけでランキングすると、海外投資家が言う日本金融界の“異常”が浮かび上がる。

「フォーサイト」ではこれまで三度、企業ランキングを試みているが、金融分野は常に例外としてきた。事業としての特殊性と金融システム不安という環境ゆえだ。「株主重視」をキーワードとする今回のランキングでも、銀行などを一般事業法人と比較することはできず、結局、独自の試算を試みるにとどまった。その主な理由は、たとえばこんなコメントにも表れている。

「彼らにとって投資の対象とは企業(corporate)。『機関(institute)』なんてところの株を買っても、契約者は理解してくれないと彼らは言う」

 外資系投資顧問会社の金融セクター担当者が「彼ら」と呼ぶのは、米国の大手年金基金。巨額の公的資金の注入を受けて経営不安からひとまず脱した日本の銀行への投資を勧めても、「彼ら」は当初まったく気乗りがしない様子だったという。その理由は、「日本の銀行は欧米と同じように株式会社の体裁を取っているが、その実態は経営の杜撰な公営公社に近いから」。「いまだに自らを金融企業ではなく金融機関と捉えているあたり、外国人投資家には理解しがたい」というのだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。