品質の良い物を低価格で欲しい。これは消費者の当たり前の欲求だ。消費者がリードする経済構造となってその欲求はますます強まっている。しかし、その陰で企業は、「乾いた雑巾をさらに絞る」果てしのないコスト削減努力を強いられる。コスト削減はモノづくりの現場である工場ほど厳しい。自動車などでは車体塗装の厚みをミクロン単位で調節するなどして五〇銭、一円という削減コストを積み上げていく。そして本命は、システムを導入しての人員削減。「システムを導入すればコストが削減できると考えるのは大きな間違いだ。大切なことは、一人ひとりが徹底的にムダを排してパフォーマンスを上げ、そのうえで能力を発揮できる多様な場を自ら創造していくことだ」 ジット経営研究所代表、平野裕之。指導を受けた企業からは「生産改革の鬼」と呼ばれるコンサルタントである。 四半世紀も前から多品種少量・短納期生産時代の到来を予見し、そのための生産体制構築に取り組んできた。これまで指導した工場は大企業から下町の中小企業まで一〇〇〇カ所以上にもおよぶ。その中には、日立製作所、三菱重工業、富士通、キリンビールなど日本を代表する企業も数多く含まれている。いわば日本産業の競争力を側面から支えてきた人物である。

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