日本ではまったく関心を呼ばなかったが、中東とりわけ湾岸地域では画期的な条約が七月初め、結ばれた。サウジアラビアとクウェートの海上国境の画定条約だ。 両国はサウジのサウド王家が今世紀の初めに一時クウェートに亡命するなど兄弟国家といっても過言ではない親しい間柄だが、近年は必ずしも関係はよくなかった。海上国境をめぐって抗争が三十年以上続いているためで、九〇年八月にイラクがクウェートに侵攻した湾岸危機の直前にも、サウジがクウェートの領土とみられる島を軍事占領するなど、両国間の対立の先鋭化があったといわれる。 今回、クウェートが妥協する形で海上の国境線が決まったことで、「湾岸地域の安定は格段に増した」(湾岸の外交筋)。イラク、イランという、湾岸産油国にとっての仮想敵国は残っているものの、湾岸アラブ産油国の結束は高まったと見て間違いないだろう。 OPECの石油増産問題は依然としてサウジが主導権を握っている。同国が周辺の安全保障をめぐる外交政策で自由度を増したことは、今後の原油政策にも大きな影響を与えることを認識する必要がある。

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