喋って笑うくらいなら

執筆者:徳岡孝夫2000年7月号

 生きれつき疑り深い男の言うことだから、割り引いて聞いていただきたい。私はオスロのノルウェー議事堂周辺を、忙しそうに右往左往するコリアン紳士の姿が見えるような気がする。どうかすると、彼らの内ポケットの中の分厚い小切手帳まで見える。ははあ、金大中大統領に今年のノーベル平和賞を取らせるロビー活動だなと思う。

 もう少し視力のいい人なら、南と北の金・金ダブル授賞への工作まで見えるかもしれないが、私にはそこまでの視力はない。どっちにせよ、元の大統領二人が逮捕されて天文学的蓄財が露見し、厳刑を宣告されたと思ったらすぐ出てくる国のことだ。日本人の常識外のことくらい平気かもしれない。

 南北コリア首脳会談後のソウルは、凄い金正日ブームだそうである。ニューヨーク・タイムズのニュースサービスは、ある屋台店での口喧嘩を報じている。

 ブームに便乗して「金正日サングラス」(レンズが淡い黒色)を売るオッサンがいた。通りかかったオバサン(63歳)が「あんなヤツと同じ眼鏡をかけて何がうれしい。テレビカメラの前で演技しただけじゃないの」と罵った。すると眼鏡売りのオッサンは「南北間の恐怖と緊張が、それだけ緩むじゃないか」と怒鳴り返したという。

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