買収の標的となる素材産業

執筆者:2000年7月号

投資家が狙うのは、製紙、鉄鋼、化学など株価低迷企業 六月二十九日、日本の素材業界にとって、記念すべき株主総会が開かれた。日本製紙と大昭和製紙。製紙メーカーの第二位と第四位の両社が、産業界では初めてという共同持ち株会社による経営統合を、この日それぞれの総会で決議したのだ。持ち株会社「日本ユニパックホールディング」は二〇〇一年三月末に誕生する。圧倒的な国内トップメーカーの誕生の裏では、「モノ言う株主」の圧力が働いていた。 両社の経営統合が固まったのは、今年三月下旬。小林正夫・日本製紙社長と、十河一元・大昭和製紙社長のトップ交渉の結果だが、双方が交渉の最後まで気にしていたのが、大昭和の大株主、大王製紙の動向だった。大王は九八年に大昭和の発行済み株式の約一〇%を突然取得。王子、日本製紙に次ぐ第三位勢力の結集を目論み、当時、噂された「日本製紙と大昭和の合併」を阻止するのが目的だった。確かに、日本、大昭和の両社はこの時から水面下で合併を模索しており、大王の動きで合併交渉はいったん流れた。 以来ほぼ二年が過ぎ、再び両社が経営統合という事実上の合併を急いだのは、大王製紙のさらなる大昭和株の買い増しが要因だ。大昭和の関係者は日本製紙との交渉の最終局面で、株主総会を乗り切るため、総会の決議に必要な三分の二以上の賛成が得られるかどうか、必死に票読みをしていた。現在の大王の持ち株比率は一四%。「あのまま、じわじわ持ち株比率を上げられては、永久に日本製紙との統合はできなかった」と関係者は振り返る。

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