六月十九日、米店頭株式市場(ナスダック)の日本拠点、ナスダック・ジャパン市場での株式取引が大阪証券取引所で始まった。東京証券取引所のマザーズ、日本証券業協会による店頭市場とともに、日本にも本格的な市場間競争が押し寄せている。

 日本版ナスダック構想は、ソフトバンクの孫正義社長が打ち上げたもの。それだけに世間の関心は孫氏の言動に集まりがちだが、旗揚げされた市場の今後の成否は、むしろ実質的運営母体である株式会社ナスダック・ジャパンの佐伯達之社長(五九)が鍵を握ると見られている。

 佐伯氏が日本IBMの副社長から転身したのは、今年一月のこと。一九六四年慶應大学法学部卒。同年日本IBMに入社して以来、ほぼ一貫して営業畑を歩んできた。話術にたけ、押しが強く、「生来の営業マン」と評される行動力には米IBM幹部の信頼も厚かったという。大手都銀への第三次オンラインの売り込みで、その手腕を発揮。八四年に取締役、九三年に副社長に昇格した。

「百年に一回のとてつもないイベントです」――。昨年三月、孫氏はそんな殺し文句で佐伯氏にナスダック・ジャパンの社長就任を口説いたという。直前には、すでに全米証券業協会(NASD)のフランク・ザーブ会長を東京の自宅に招き、日本版ナスダック設立の地ならしを終えていた。

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