米大統領選で注目を集める大物副大統領候補

執筆者:田中明彦2000年9月号

 幸いなことに、この夏は、世界を揺るがすような大事件は起こらなかった。ロシアの原子力潜水艦の沈没は悲劇的であったし、また、それが現在のロシアの状況を象徴しているように見えるが、世界的な大問題とまではいえないだろう。 世界的な大事件がないということになると、やはり目に付くのは、アメリカ大統領選挙ということになる。 七月末から行なわれた共和党大会をうけて、八月にはロサンゼルスで民主党大会が開催され、当然のことながらゴア副大統領が民主党大統領候補となった。やや意外な展開だったのは、副大統領候補にジョセフ・リーバーマン上院議員が選出されたことである。クリントン大統領のスキャンダルの時に、はっきりとクリントン批判をしたことでリーバーマン上院議員は有名であり、その意味でも意外にも見えたが、それよりも注目を集めたのは、リーバーマン上院議員がユダヤ系であることだった。「上院の良心」とも呼ばれるリーバーマン上院議員に対する評価は極めて高い。その意味でいうと、共和党の側もディック・チェイニー元国防長官というきわめて堅実で評価の高い人物を副大統領候補にしており、今回の大統領選挙は、「大物の副大統領候補同士の対決」といってもよい。

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