中国の江沢民国家主席が、十一月に国家主席として三十七年ぶりにカンボジアを訪問した。これまで日本に過去の歴史認識を執拗に求めてきた中国だが、カンボジアでは九〇年代初めまで十五年余りにわたりポル・ポト派を軍事支援した過去について“知らぬ存ぜぬ”を貫き通した。 先の朱鎔基首相の来日で耳にタコができるほど聞かされた「歴史を鑑に未来に向かう(以史為鑑面向未来)」の成語を忘れたわけではあるまいが、プノンペンの一部学生たちからは、中国に過去の「謝罪」を求める声もあった。 カンボジアと中国の友好関係の陰で、北京が過去にポル・ポト派へ大量の武器供給など様々な支援をしたからこそ、数百万人に及ぶ大虐殺が可能になった事実は誰もが知る話。カンボジア国民もそれを熟知しているため、大いに割りきれない感情が残ったと言われる。 また、カンボジア訪問に先立つラオス訪問で、中国側は経済支援を誓約した際、金額を発表しなかったのは、日本から政府開発援助(ODA)を受けながら、“中国の裏庭”とも言えるインドシナ半島で援助する側に回っている事実に注目されたくなかったというお家の事情と見られる。

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