プーチン政権内で深まる確執

執筆者:桜井薫2001年1月号

「漁夫の利」を狙うウォロシン大統領府長官とイワノフ安保会議書記[モスクワ発]昨年五月のプーチン新政権の発足以降、ロシア情勢はすっかり安定した感がある。だが、政権安定を下支えしてきた国内経済の回復基調には徐々にかげりが見えつつある。昨年、七%という経済成長率の原動力となった原油市況の高騰が峠を越えたからだ。政争の芽はすでに、プーチン政権が着手しようとしている独占企業体の改革論争にかいま見られるようになっている。「あなたの改革案は全く不明朗だ。国家の利益を損なう可能性がある」「私は自分の責務を履行している」「そういえばエリツィン前政権時代にあなたが主導した過去の民営化も、大国営企業を極めて割安な価格で少数の財界人に分けただけだったな」「我々が何もしなければ、あなたが大統領顧問になることはなかった」 十二月中旬。ロシア国営テレビの討論番組で、二人の要人が真っ向から対立し、激しい火花を散らした。議題は国内の電力供給の八五%を賄っている独占企業体「統一エネルギー・システムズ(UES)」の改革問題。火花を散らした討論者はそのUESを率いるアナトリー・チュバイス社長(元第一副首相)と、ロシア経済学界の“異端児”の異名を持ちながらプーチン大統領の経済担当顧問に登用されたアンドレイ・イラリオノフ氏である。

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