短命に終わりそうな「シャロン政権」

執筆者:立山良司2001年2月号

国際的にも孤立し、海外からの投資も激減 相対的多数でも選挙に勝てば、全体の代表だ。それが公選制度の長所でもあり、短所でもある。このことは米大統領選挙の開票騒動にもあらわれたし、二月六日に行なわれたイスラエル首相選挙でも実証された。有権者の三分の一の支持しか得なかったが、リクード党首アリエル・シャロン氏はイスラエルでは異例ともいえる高齢の七十二歳で、ついに首相の座を射止めた。 選挙期間中、リクード陣営は「シャロンだけが平和をもたらす」とハト派イメージの売りこみに懸命だった。だからといって「イスラエルの地」(パレスチナの地)に対するユダヤ人の絶対的な権利を主張し、エルサレムのイスラム教徒地区に自分の家を持っている実践的入植者シャロン氏の本質は変りようがない。圧倒的な軍事力でアラブ人を蹴散らしてきた過去を考えると、「シャロン氏はアラブから見れば悪魔同然だ」というリチャード・マーフィー元米国務次官補の形容も決して誇張ではない。 そんなシャロン氏が何故、勝利したのか。基本的に二つの要因がある。一つは現職のバラク首相の政治手腕に対するイスラエル国民の強い不信感だ。バラク氏は前回一九九九年の選挙で、その輝かしい軍歴を背景に、和平実現のために果敢な政治決断をする人物との期待を担って首相に当選した。しかし、在任中の一年半は空回りの連続だった。

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