「私は、『二つの集中』を一度に解決する道は、日本の東京以外の場所にハイテク・ベンチャー企業の集中地域を、ひとつでも、ふたつでも、新たに創造することだと考える。それこそが閉塞状況にあるわが国の未来を切り開く道であると、そう考える」(東一眞『「シリコンバレー」のつくり方』中公新書ラクレ 六八〇円)「テクノリージョン」とは聞き慣れないが、「ハイテク・ベンチャー企業の高度な集積地」との意で、アメリカでしばしば使われる言葉だ。その代表例であるシリコンバレー以外にも、ボストン、ワシントンDC、テキサス州オースチンなど、アメリカの広い国土にはテクノリージョンが点在している。翻って日本では、「東京」及び「大企業」への先端技術の集中は甚だしい。この「二つの集中」が日本の活力減退を招いたとみる著者は、解決策としてテクノリージョン作りを提案する。 読売新聞記者である著者は一昨年、ハーバード大学に留学。その際まとめたペーパーが本書の元になっている。知識の源泉としての大学や研究所の重要性、特許制度、ベンチャーキャピタルの役割、「シリコンバレーの父」と呼ばれたターマン・スタンフォード大元副学長のような「地域プランナー」の存在など、テクノリージョン成立に必要な各要素が、豊富な具体例をあげて分析される。その上で、「単なる引越し」に過ぎない工場・研究所誘致の弊害、テクノポリス法や頭脳立地法の限界など、これまで日本にテクノリージョンが生まれなかった原因が解き明かされる。

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