東京海上火災保険の樋口公啓社長(六五)が六月の株主総会後に退任、後任に石原邦夫専務(五七)が昇格する人事が三月末、突然発表された。同社周辺で交代は来年六月と目されていたのに加え、石原氏が末席専務から七人飛びの抜擢ということもあって、憶測を呼んでいる。 石原氏の担当はシステム整備。トップへの登竜門の営業や企画畑出身ではない。まずここから窺えるのは、朝日生命保険、日動火災海上保険、共栄火災海上保険と経営統合する「ミレア保険グループ」のスタートが来年四月に迫り、業務の効率化が大きな課題となっていることだろう。 また樋口氏が進めた積極的な多角化は、三菱グループ内にも波紋を広げてきた。旧日本債券信用銀行の受け皿銀行「あおぞら銀行」への出資で東京三菱銀行と反目し、「ミレア」では明治生命保険との関係が悪化。余計なしがらみの無い石原氏に早めにバトンタッチして、グループ各社との関係修復を図る狙いもあると見られている。

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