タイの憲法裁判所は八月三日、タクシン首相の資産隠し疑惑の審理を終え、十五人の判事による八対七という小差の裁定を下し、無罪判決を言い渡した。無罪の理由について憲法裁は「首相に資産隠しの意図があったとの証拠を得られなかった」としているが、有罪が確実視されていただけに、早くも「首相周辺から判事への現金攻勢があった結果ではないか」との情報が流れている。 有罪判決が出ていれば失職は免れない事態だっただけに、タクシン首相は「国民の支持のお陰」とコメントしながらも、辛うじての無罪判決と、「政治的配慮や金銭疑惑」との観測に強い不満を募らせている。 そのためタクシン首相は判決後、反撃を開始し、資産隠し容疑で同首相を起訴した「国家汚職防止委員会」の権限を再検討する方針を表明する一方で、有罪に投じた判事周辺の疑惑捜査を密かに治安当局に命じたといわれており、タイの民主化は再び混沌としてきた。 ただ、軍首脳部の間では「首相がスネに傷を持つことが明白になっただけに、今後は軍の影響力を行使しやすくなった」との見方も出始めており、首相が苦しい政権運営を迫られることだけは確実な情勢だ。

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