売れる欧州車、売れない日本車

執筆者:加納修2001年9月号

高級車だけでなく、小型車市場でも欧州勢がシェアを伸ばしている。一方で、方向性を見失った国内メーカーの生き残りはますます厳しくなっている。「どうもおかしい。単に売れないのではなく、消費者の動きがつかめない」とボヤくのは、トヨタ自動車のある販売担当幹部。長年自動車販売の営業職を務め、「不景気の時も好景気の時も、だいたいの市場の動きは掌握してきたつもり」だったが、最近の自動車販売市場は「方向感がつかめない」というのだ。実は、市場の方向感がつかみきれないのは同氏ばかりではない。メーカー・ディーラー問わず、多くの市場関係者がそう強調する。 右肩上がりで続いた国内乗用車販売は、バブル崩壊とともに一気に縮小。乗用車だけで、ピーク時に比べて百万台も落ち込んだままだ。関係者は「何がどう動くのか分からない」と苛立つが、背景には、国内の自動車市場に起きつつある、かつてないほど大きな地殻変動がある。 今年一月。カルロス・ゴーン社長の強力なリストラ断行のもとで、財務面に限ってみれば、見事に「V字回復」を遂げた日産自動車は、回復の象徴として高級車「シーマ」の新型を華々しく披露した。発表当初こそ、「爆発的な売れ行き」(都内日産系ディーラー首脳)だったが、わずか三カ月後の四月には、その動きは「ピタリと止まってしまった」(同)。通常だと高級車には一定の法人ユーザーが見込めることもあり、ゴーン人気にも乗って、「一年は新車効果が見込める」(日産首脳)はずだった。ところが、勢いは数カ月しかもたなかった。

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