「悪の枢軸」演説にどう向きあうか

執筆者:田中明彦2002年2月号

 小泉首相の「三方一両損」の外相・外務事務次官更迭劇の大騒ぎのためか、あまり注目されなかったが、同じ時期に行われたブッシュ大統領の「一般教書演説」の方が世界的にみれば、はるかに重要である。 東京でアフガニスタン復興支援会議が開催され、日本では、テロに対する戦いはもはや終わったかのような雰囲気があるが、アメリカ合衆国大統領は、「我が国は戦時にある」とアメリカ国民に語っていることを忘れてはいけない。「いまだに何万もの訓練を受けたテロリストが野放しになっている」からであり、「少なくとも十数カ国にテロ訓練所が存在する」。確かに、未然に防止されたとはいえ、十二月にはアル・カエダと関係する人物によって航空機の爆破が試みられた。     * しかし、この演説で最も注目を浴びたのは、ブッシュ大統領が北朝鮮とイランとイラクを名指ししたうえで、「これらの国家と、かれらと同盟するテロリストたちは、世界平和を脅かすため武装している悪の枢軸(axis of evil)である」と断定した部分である。「危険がせまって来ている時に、私は事件の発生を待ちはしない」、「ここで止めて、テロ訓練所やテロ国家を放っておいたら、我々の得られる安心感は偽りのもので一時的なものにとどまる」と大統領は語った。これについて、『ワシントン・ポスト』紙社説は、「大統領は、厳密に時期を指定していないし、アメリカがこれらの政権に何をするかも示していない。しかし、何らかの行動をとるという必要性について、疑問の余地を意図的になくそうとしていると見てよいであろう」と解説している(“State of the Union”『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン(IHT)』、一月三十一日)。

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