自民党でも進行する「松岡利勝外し」

執筆者:鮎川彩二2002年5月号

「農水省の政策決定に最も大きな影響を与えているのが国会議員、とりわけ農林関係議員であるのは故なしとしない」 四月二日、農水相と厚生労働相の私的諮問機関である「BSE問題に関する調査検討委員会」(委員長・高橋正郎女子栄養大学大学院客員教授)が提出した報告書は、農林水産行政で顕在化する「政官癒着」の弊害に正面から切り込んだ。原案に盛り込まれた「自民党」や「農水族」といった生々しい言葉は消えたが、農水省の方針が政党の意向次第で大きく左右されかねない現状に「ノー」を突き付けたという点では、まさに画期的なものとなった。 与党・自民党による事前審査制が定着している現在、担当官庁がまとめた政策がそのまま政府方針として打ち出されるとは限らない。とりわけ農林水産行政においてはその度合いが強く、農水省は政策決定に当たって主体性を大きくそがれている。 狂牛病(BSE)対策でも、この構図は変わらなかった。最も問題視されているのが、昨年十月十八日に始まった狂牛病の全頭検査よりも前に食肉処理された国産牛の国による買い上げ・焼却処分。当初、農水省は「検査前の牛肉も安全だ」(武部勤農水相)として、国が買い上げること自体にも消極的だったが、自民党農水族はこれを許さなかった。

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