五兆円とも十兆円とも言われる特需が期待される電子政府構想がいよいよ本格的に動き出した。だがその舞台裏では、ゼネコンと公共事業の関係そっくりの、お粗末な調達システムが出来上がりつつある。 情報技術(IT)によって行政事務や住民サービスの劇的な効率化をめざす「電子政府」。五―十兆円とも言われる特需が、税金を食いつぶす公共事業にも似た「行政と業者のお祭り」に化け始めた。八月はじめに住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)が稼働し、来年に向けて中央官庁、自治体で様々なシステムが一斉に立ち上がる計画だ。しかし、情報システムの本質を理解しない行政と、とにかく大型受注をとろうと群がるIT業界による狂騒曲だけに終われば、「二〇〇五年に世界最先端のIT国家に」との国家戦略は画餅になる。 六月上旬、岐阜県大垣市でのあるシンポジウム。二千人の聴衆を前に、ソフトバンクの孫正義社長は岐阜県の梶原拓知事にこう語りかけた。「政府は国民の資産である無線周波数を有効に使っていない。特区として岐阜が知事の権限で無線を事業者に配分すれば、新しい技術やビジネスはいくらでも生まれる。実現してくれれば(無線LANやブロードバンド技術を持つ)当社もすぐに岐阜に進出しますよ」。

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