「総理、お聞き下さい。今、こんな川柳が歌われています。『純ちゃんと叫んだ私が恥ずかしい』『純ちゃんと叫んだ私が恥ずかしい』。この川柳は、あなたに期待した多くの女たちの声だと思います。(中略)あなたに期待した人の、この落胆の声をしっかり受け止めて、即刻、総理を辞めていただきたい」 通常国会閉幕を翌日に控えた七月三十日の衆院本会議。議題は民主、自由、共産、社民の野党四党が共同提出した、小泉内閣に対する初の不信任決議案だった。 川柳を披露したのは、討論の最後に登壇した社民党の山内惠子氏。わずかな可能性にしても、衆院解散・総選挙をかけた採決を目前にして、本来なら、与党から造反者が出ないか、紫の袱紗に包まれた解散詔書が議長席に届くことはないか、と否が応でも緊張が高まる場面だ。ピーンと張り詰めた空気が議場を包んでもおかしくない。 しかし、この日の議場には、そんな重苦しい空気は露ほどもなかった。山内氏の演説には与党席、野党席を問わず笑い声が広がり、目をつぶって聞いていた小泉純一郎首相もつられて苦笑を漏らしたほどだ。 緊張感のなさは、この日に始まったことではなかった。延長国会で政府・与党が成立を期したのは郵政、医療改革関連法案の二本だけ。医療関連法案は六月下旬、郵政関連法案も七月上旬に衆院を通過し、この三週間、衆院では開店休業状態が続いていたのである。民主党議員の多くは九月の党代表選挙に向けて走り出し、他の野党議員は世間より一足早く夏休み気分に浸っていたのが実態だった。

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