「皇帝の女に手を出すな」――中国共産党中央の幹部らが囁き合っている。二〇〇〇年九月、成克傑・前全国人民代表大会常務委員会副委員長は、約四千百万元という巨額の収賄を問われ「建国以来、汚職で死刑になった最高位の幹部」(当時の新華社電)と伝えられた。 ところが最近、死刑判決を指示した江沢民国家主席の怒りの原因は「成が、江の小秘(愛人)である歌手の宋祖英にちょっかいを出したから」が定説に。成が広西チワン族自治区主席を務めていた九二―九三年に宋が同地で公演した際、「とても失礼な態度と言葉で宋に接した」。その後、愛人に昇格した宋が、江主席に直訴したという。 問題は、なぜ今ごろ噂が噴出するのか、だ。事件当時、成の収賄が幹部全体の腐敗への批判を盛り上げたため、党中央は三千万元以上の汚職は公表しない内部規定を作った。だが、胡錦濤総書記はこの一月二十八日に政治局会議を開き、「まずわれわれ政治局員が、幅広い党員と人民の監督を受けねばならない」と述べた。 党中央のある幹部は、「胡は、成ですら出世が可能な仕組みに欠陥があると考えている。腐敗撲滅は本気で、まずは先の内部規定を骨抜きにする狙い」と解説している。

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