トヨタ自動車や新日本製鉄と並び、国内シェアで四〇%というガリバー企業、太平洋セメント。同社は一九九八年十月に秩父小野田と日本セメントが合併して誕生したが、合併後の資産膨張によるバランスシート毀損への懸念はいまだに払拭されない。 両社の有力OBらの抵抗によりセメント工場などの設備廃棄が遅々として進まず、子会社の統合も遅れた。資産の急激な膨張で合併前と比べ株主資本比率が一〇ポイントも低下し、有利子負債の削減も思うように進んでいない。「今では海外大手に買収されるリスクすらある」(業界関係者)との見方まで出ている。 さらに、財務の悪化に拍車をかけたのが二〇〇〇年に実施した韓国最大手・双龍セメントの買収。出資後、双龍セメントに隠れ負債の存在が明らかになるなど、「ガリバーの自尊心が結果として裏目に出た」格好だ。公共事業の縮小などで国内セメント市場は先細りが必至だが、ライバルの住友大阪セメントが三工場を閉鎖、二五%も生産能力を削減したのとは対照的。思い切った策が打てるかどうか、セメントのガリバーは決断を迫られている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。