香港新聞業界の風雲児・黎智英率いる『蘋果日報』が五月二日、台湾版の発行を開始した。蘋果日報と言えば、一九九五年の創刊時には低価格攻勢で他紙を廃刊に追い込んだほか、香港返還後も中国に批判的な言論を展開するなど、斬新な販売戦略とショッキングな紙面で定評がある。死去直前のトウ小平の盗撮写真が一面を飾ったのは、今でも語り草だ。 スタンド売りに力を入れる蘋果日報は、台湾版でも一部五元(約十七円)の低価格攻勢を展開、既存大手紙『聯合報』『中国時報』が小売価格を十五元から十元に下げるなど競争が激化している。「李登輝前総統が三億元横領」といった刺激的な見出しは注目度抜群で、蘋果日報のスキャンダル報道に誰もが熱い視線を送っている。 実は黎智英の真の狙いは、事業基盤の台湾移転にあるという。ライバル紙幹部は「蘋果の中国批判が仇になって系列アパレル『ジョルダノ』の中国進出が難航し、結局黎はジョルダノを売却した。『一国二制度』下の香港を見限った」と分析する。ただ、蘋果日報の暴露報道に脅える民進党周辺は「蘋果は中国系資本との噂も根強く注意が必要」と、背後に北京の影があることを警戒しているようだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。