あまりにも「イスラエル系」に依存していたことに、ブッシュ政権は気がついた。遠からず、アメリカだけが自在に暗号を解読できる日が来るかもしれない。 前回の運輸安全保障で取り上げたように、アメリカの安全保障基準の実行手段の決め手は情報技術(IT)である。最先端のITパワーと帝国としての強制力で、グローバル経済社会を支配することができる。グローバルなITネットに安全保障基準というフィルターをかけて反米テロを摘発、防止しようというのだ。 ところが難題がある。暗号技術である。暗号が進化すればするほど情報はフィルターをくぐり抜ける。暗号技術の開発や普及を規制すれば、今度は電子メール、電子商取引、インターネットバンキングなど爆発的に拡大するIT経済の安全が破壊される。暗号技術で世界をリードするアメリカが技術の輸出を規制しても、欧州や日本が独自技術を発展させ、アメリカの暗号覇権が危うくなる。アメリカのジレンマだ。 解決策はただひとつ、アメリカが暗号システムの国際標準を絶えず支配し、アメリカだけがいつでも解読できるようにすることである。実はその戦略に関してブッシュ政権は重大な軌道修正を図っている。 同時多発テロは、情報収集、捜査の各機関が縦割りになっているために防止できなかったとされる。ブッシュ政権は、暗号盗聴機関の総本山、NSA(国家安全保障局)をはじめ、CIA(中央情報局)、FBI(連邦捜査局)など、関係諸機関の本土防衛機能を統括する職員十七万人の国土安全保障省を設立した。

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