著者の目論見は、現職大統領ジョージ・W・ブッシュの最大の特色である彼の信心深さの源を探ることにあったに違いないが、評伝のタイトルを、ブッシュの「人生」ではなく「信仰」としたのは多分に営業戦略と見るべきだ。というのも、ジミー・カーターが妻以外の女性に浮気心を抱いたことがあると告白して以来、大統領の信仰にこれほどの関心が集まったことはないからだ。『The Faith of George W. Bush(ジョージ・W・ブッシュの信仰)』(Tarcher/Penguinなど数社より刊行)で著者のスティーブン・マンスフィールドは、情熱的信仰心を持つという点で、ブッシュは近年希に見る大統領であり、「彼は公の場で口にすることを本当に信じている」という。著者は元牧師で、近年は主に福音主義キリスト教に関する本を書いている。 むろん、歴代大統領はみな信仰をもち、誰もが演説では聖書を引用した。しかし、実際にはその宗教的表現は元の意味を離れ、時代時代のアメリカ社会の要請にあわせて合理的に使われてきたことも事実だ。つまり、アメリカ人の理念や信仰は、世俗国家ゆえの知恵として、うまく織り込まれてきたのだ。政教分離こそがまさにアメリカ民主主義の土台なのである。

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