「イン・ザ・シャドウ・オブ・ゴーン(ゴーンの影で)」。カルロス・ゴーン氏が日産自動車の再建にようやく足がかりを築き始めた二〇〇〇年の秋、英エコノミスト誌にこんなタイトルの記事が載っている。もっとも、そのメインテーマは日産ではなく三菱自動車だ。過剰人員、過剰設備、高コストの調達体制に巨額の債務――。かつてこの二社は、実によく似た問題を抱えていた。 名望を集め始めたゴーン氏に遅れること約二年。二〇〇一年に三菱自動車の副社長として日本にやってきたロルフ・エクロート氏の胸中は、「ゴーン何するものぞ」という思いだったろう。一九九〇年代末の自動車業界再編のうねりの中、三菱はダイムラークライスラーを筆頭株主として迎えていた。エクロート氏は、そのダイムラーのブラジル現地法人や鉄道車両子会社を立ち直らせ、再建屋のエースとして名を馳せたのだ。 エクロート氏は、やるべき課題ははっきりしていると感じたに違いない。実際、二〇〇四年三月期を最終とする経営計画のうち、人員と生産能力の削減目標は一年前倒しで達成。二〇〇二年度は五年ぶりの増収で過去最高益を記録した。三菱は確かに再建の糸口をたぐり寄せていたと言えるだろう。

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