火種は消えていない米国の住宅金融問題

執筆者:青木勝2004年4月号

[ニューヨーク発]米国の政府支援機関(GSE)であるファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)の改革論議が注目を集めている。住宅ローン証券化市場の二大プレーヤーの経営リスクが、金融システムを揺るがしかねないとの意識が高まったからだ。 両社は民間金融機関から住宅ローン債権を買い取り、住宅ローン担保証券(MBS)を保証・発行する。ともにニューヨーク証券取引所に株式を上場するれっきとした民間企業だが、そのMBSやGSE債には「暗黙の政府保証」があるとみなされ、米国債に次ぐ高い信用力を維持してきた。 ファニーメイは一九三八年、フレディマックは七〇年に連邦政府機関として設立された。七〇年、八八年にそれぞれ民営化された後も、(1)財務省による二十二・五億ドルの信用供与枠、(2)州など地方自治体の所得税免除、(3)発行証券の米証券取引委員会(SEC)への登録免除――などの優遇措置が与えられている。「暗黙の政府保証」があると見なされる背景には、こうした事情がある。 ただ、両社の事業規模からみれば財務省による信用供与枠は余りにも少額だ。証券化とMBSの自己保有を含めてファニーメイの事業規模は一・八兆ドル、フレディマックは一・三兆ドルに上り(二〇〇二年末)、二社で住宅金融市場全体の四五%を占めている。九〇年時点での二五%と比較すると、超低金利に支えられた旺盛な住宅需要や住宅ローン借り換えの活発化を背景に、両社のシェアは飛躍的に高まったことがわかる。

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