混迷の台湾総統選後を読む

執筆者:早田健文2004年5月号

投票前日の銃撃事件を理由に票の再集計、再投票を求める抗議が続いている。だが、再選された陳水扁総統は今後も強気の姿勢で臨むという……。[台北発]台湾総統選挙の投票前日三月十九日、陳水扁総統銃撃の一報が飛び込んできたとき、二〇〇一年の立法委員(国会議員)選挙の投票前日に開かれた民進党集会を思い出した。 当時、陳水扁総統は政権交代を果たしたものの、少数与党であるために苦しい政権運営を続けており、この選挙にはまさに政権の命運がかかっていた。台北市で開催された集会の最後に陳水扁が登場し、集会が終了すると、なんと陳水扁はステージから真っすぐ階段を降りて広場に立ち、支持者の中に分け入って人々と握手を始めたのである。護衛が必死に盾になっているが、大勢が押し寄せてくる。陳水扁はもみくちゃになりながら、人波をかき分けて広場の反対側にたどりつき、待機していた車に乗り込むまで延々と握手を続けた。この効果もあってか、民進党は立法院の第一党に躍進した。 総統職に命をかけている。その姿勢には感動すら覚えたが、同時にその無防備さを懸念したのも事実だ。 今回の投票前日も、陳水扁はオープンカーの上で支持者に手を振りながら台南市を回っていた。そして、歓迎の爆竹が鳴り響くなか、銃撃を受けたのである。陳水扁陣営、対立候補の連戦国民党主席の陣営とも、支持者同士の衝突を恐れ、最終日の大規模集会を中止した。翌日予定通り実施された投票の結果、陳水扁総統が再選を決めた。得票は陳水扁六百四十七万千九百七十票、連戦六百四十四万二千四百五十二票。得票率で〇・二二ポイントの僅差だった。そして、いまだに続く混乱の幕は開いた。

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