死者四十人以上を出した二月のモスクワ地下鉄テロ事件がロシア国内外に余波を生んでいる。 まず、事件そのものについてはチェチェン独立派とみられる「ガゾタン・ムルダシュ」なる組織がネット上の独立派系サイトを通じて犯行声明を出した。この組織は無名の存在で、穏健派のマスハドフ元チェチェン共和国大統領や強硬派のバサエフ野戦司令官らとは一線を画す新派閥との説が浮上。ロシア治安当局はチェチェン対策の大幅見直しを迫られそうだ。 一方、地下鉄テロ事件後、ヤンダルビエフ元共和国大統領代行が中東カタールで暗殺された。「地下鉄テロへのロシアの報復」(イズベスチヤ紙)との見方が強く、カタール当局はロシア情報機関員ら三人を逮捕した。 プーチン政権は彼らの救出に躍起で、大統領自身がカタールのハマド首長に電話で談判するほど。対抗措置としてカタールのスポーツ選手一人を拘束し、逮捕されたロシア人の一人と交換を実現させたものの、残る二人についてはカタール当局が釈放要求を拒否。斬首による死刑か終身刑を言い渡す可能性が高い。今後も外交問題として尾を引くことは確実だ。

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