業績絶好調で世界制覇に着々と布石を打つ英ボーダフォンが、対米戦略で迷走している。既存の提携先である全米一位のベライゾン・ワイヤレスから乗り換えて、同三位のAT&Tワイヤレスの買収に名乗りを上げたが、米シンギュラー・ワイヤレスとの競り合いに負けてしまったのだ。 ボーダフォンの海外戦略は旧J-フォンを買収後に「ボーダフォン」に社名変更した日本の場合のように、出資先企業の経営権を完全に掌握し、自社ブランドで世界展開するのが特徴だ。ところが、米国に限っては提携先のベライゾン・ワイヤレスへの出資比率は四五%どまり。親会社のベライゾン・コミュニケーションズの抵抗でボーダフォンは経営権を掌握できなかった。これに対し、AT&Tワイヤレスは、業績不振による“身売り”のため、経営権を取得できる可能性が高いため、ボーダフォンは「賭け」に打って出たのだ。 しかし、フタを開けると、買収提示金額は米シンギュラーに及ばず、買収に失敗。シンギュラーは買収後に重複施設のリストラなどで合理化できる分、高めの金額を提示できる余裕があったが、ボーダフォンは「収益は株主に還元すべきだ」と株主の反発が根強く、思い切った金額を提示できなかったのが敗因だ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。