＞共産党や公明党のような政党は除いて、今の政界には自民党と反自民党しかないように見える。民進党はこれを克服し、独自のアイデンティティを確立しなければならない。

「独自のアイデンティティ」というものは、逆に有害無益だと思います。
共産党は共産独自のアイデンティティを持っていますが、それは一定のイデオロギーに染まっていることでもあり、大政党になる見込みはありません。ナショナリスト系で「独自のアイデンティティ」を持つ政党（維新やこころ）も同様です。
公明党は一定の影響力を持っていますが、国政の自民なり都政の都民FなりのNo.1との協力あってのものです。創価学会という「独自のアイデンティティ」があるかぎり、独力での影響力拡大は望めません。

逆に自民党は、改憲政党を標榜しつつも口だけ（※）だったり保守政党を標榜しつつも一貫して政府を肥大化させ続けているにもかかわらず、大きな支持を得ています。改憲派や保守としての「独自のアイデンティティ」を持たないからこそ、護憲派や「大きな政府」派の支持をつまみ食いして繁栄することができたのです。

※非現実的な内容の改憲案公表や、現憲法の無視や死文化ならやっていますが。


そもそも、現在日本の政治を劣化させているのは、政党アイデンティティの欠如ではありません。
「身内を依怙贔屓しない」（例：森友学園問題）「ルールを守るか、ルールが間違っているならそれを指摘すべき」（例：加計学園問題や台湾「国籍」問題）「不都合な真実でも目をそらさず、隠さない」（例：日報隠蔽問題）といった初歩的な道徳の問題です。
自分探しをする暇があったら、民進党自身に責任のある部分だけで良いので、反省し改善すべきです。

民進党の綱領に、こう書いてある。《私たちは、「公正・公平・透明なルールのもと、多様な価値観や生き方、人権が尊重される自由な社会」「誰もが排除されることなく共に支え、支えられる共生社会」「未来を生きる次世代への責任を果たす社会」を実現する。》また、こうも有る。《未来への責任　改革を先送りしない》

で、民進党はどう行動して来たか？　たとえば獣医師会から献金を受けた議員が、加計学園の獣医学部新設計画に難癖を付け、妨害した。加えて「国家戦略特区」の停止を主張している。《誰もが排除されることなく共に支え》《未来への責任　改革を先送りしない》を、民進党はどこに置き忘れて来たのだろう。
この政党、つい最近の例で、「テロ等準備罪法（共謀罪）が成立したら海外亡命する」と叫んでいた議員は、ケロッと忘れたふりをしている（多くの国民も忘れかけている。共謀罪で不当逮捕者が出たか）。森友・加計にしても然りで、大騒ぎした割に中身は無く、もう少し時間が経つと「そんな古いこと興味ありません」などと逃げ、次の“問題（憲法改正）”で騒ぎまくるでしょう。

綱領を持たず世論にせっつかれ、急遽“綱領”を作った民主党。その変名政党である民進党は、有って無きが如き綱領を戴く烏合の衆。烏合の衆を取り敢えず一つの集団にまとめておく上で、「アイデンティティ」は邪魔者でしかない。かくしてアイデンティティ不要論、あるいは、アイデンティティ有害論の誕生となる。

井伏鱒二の『山椒魚』のように、狭い穴蔵から覗いて見た「アイデンティティ」と、広い川底から眺めた「アイデンティティ」は異なるのかも知れません。

アイデンティティ不要論、あるいは、アイデンティティ有害論は民進党の救世主となるか？