経営難に陥っているフランスの重電・輸送機器大手アルストムを、フランス政府が公的資金投入などにより救済する計画が七月八日、欧州連合(EU)の欧州委員会から承認され、九日の同社株主総会で正式に決まった。仏政府の出資比率は三割を超え、国策会社の色彩が強まる。 アルストムは仏新幹線(TGV)や豪華客船を建造する欧州の代表的企業。韓国にも新幹線車両を納入するなど、日本やアジアとも無縁ではない。そればかりか、類似の事業分野を持つ三菱重工業などとの合併・買収(M&A)の観測も出始めた。 今回の救済策に欧州委は厳しい条件をつけた。欧州のライバル企業が不利益を被らないようにするためだ。具体的にはスペイン、オーストラリアなどでの鉄道・輸送機器関連を含む約十五億ユーロ相当の事業売却と、四年以内のエネルギー、輸送部門における「長期的かつ構造的な」提携、つまり他社とのM&Aの実施を義務付けた。 欧州ではドイツの重電大手シーメンスが、既にアルストムの一部事業の買収に名乗りをあげている。しかし、仏政府は自国の有力企業が解体され、主導権もドイツに移るのは認められないと強硬に反対。仏原子力最大手で国の出資比率が直接、間接で九割近いアレバとの事業統合を模索したが、これには欧州委が異論を唱えた。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。