トルコはなぜEUに加盟できないのか

執筆者:波津博明2004年8月号

フランスを筆頭とする反対派は、トルコの「三つの異質性」に抵抗している―― トルコの欧州連合(EU)加盟問題が、今年山場を迎える。十二月のEU首脳会議で、加盟交渉を開始するかどうかを決めることになっているからだ。トルコ問題を延々と先送りしてきたEUも、今度は逃げられないはずである。 EUはこの五月、旧東欧を中心に十カ国を新たに迎え入れ、二十五カ国体制となった。しかしトルコはハンガリーやポーランドとは異質だ。従来の候補国とトルコが決定的に異なるのは、この国がそもそも欧州に属しているのか否か、今も議論が続いている点である。トルコの国土の九七%はアジアにあり、七千万の人口の大半がイスラム教徒。しかも、その人口は十数年後には八千万を超えてドイツを凌ぎ、加盟すれば、「EUの一員」にとどまらず、近い将来EU最大人口の国家となる。そうした事態を欧州人は受け入れられるのか。 ジスカールデスタン元仏大統領が二〇〇二年十一月、ルモンド紙とのインタビューで行なった発言は示唆的だ。「トルコの人口の九五%は欧州外に住む。首都アンカラは欧州にはない。トルコは欧州の国ではない。トルコが加盟したらEUは終わりだ」。 単なる「元大統領」の不規則発言ではない。ジスカールデスタン氏は当時、EU憲法を起草する「欧州の将来像協議会」の議長を務めていた。彼はさらに、「欧州首脳がトルコに本音を言わないことが問題なのだ」と付け加えた。発言は物議を醸したが、少なくとも前半は事実を並べたに過ぎない。英紙フィナンシャル・タイムズも、「欧州の指導者たちがつぶやいてきたことをはっきり言っただけ」と評した。

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