サウジアラビアはどこへ行くのか

執筆者:畑中美樹2004年9月号

続発するアル・カイダによるテロが、サウジアラビアで革命の引き金を引くとの観測がある。だが、本当の試練は治安悪化以上に根深い。近代化への試行錯誤が続く「アラブの盟主」の実情は――。「喉が渇ききって砂漠にいる。行く手に何か輝くものが見えたと想像してほしい。水源ということもあるだろう。だが、もし光が蜃気楼だったなら、下手に動けば死んでしまう」 サウジアラビアのバンダル駐米大使は昨年、自国が近代化を進める姿勢をこんな比喩で表現してみせた。「我々は苦境に陥った時、まず立ち止まり、確信を得てからゆっくりと歩き始める。それがあなた方アメリカ人と違うところなのだ」     * サウジアラビアでのテロ被害者はイラク戦争後に急増し、これまでに約九十人が死亡している。当局が国内のアル・カイダ指導者を殺害するなど治安対策は本格化しているものの、まだ明確な効果は見えていない。 サウジアラビアは、かつてのイランと同じ運命を辿るのだろうか。王家・サウド家の「アメリカ追随」を糾弾しながら、アル・カイダ系テロ組織が蠢いている。アメリカはそんなサウジアラビアの姿を、パーレビ王政末期のイランに重ね合わせているようだ。イスラム原理主義者が学生、市民、バザール商人たちを糾合し、シャー(国王)に退位を迫った一九七九年。「アメリカの諜報機関はサウジアラビアが同様の事態に陥りかねないと懸念している」。クラーク元米テロ対策大統領特別補佐官はこう語る。

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