立ち止まれない男、孫正義

執筆者:杜耕次2004年9月号

ソフトバンク・孫社長の事業拡張欲は留まるところを知らない。だが、最大のリスクはライバルNTTの存在ではなく、自身の事業手法ではないのか――「全面勝利!」――。ソフトバンク社長、孫正義の快哉が聞こえてきそうな係争劇の幕引きだった。 情報処理大手CSKは八月五日、同社が保有する傘下のコールセンター最大手ベルシステム24の株式(発行済み株式の三九・二%)の大半を売却すると発表した。七月二十日にベル社が総額千四十二億円の第三者割当増資計画を突如明らかにし、これに強く反発した筆頭株主のCSKが東京地裁に新株発行差し止めの仮処分を申し立てる事態にヒートアップした問題は、急転直下、氷解した。 ベル社は一九八二年設立。転送電話で急成長したチェスコムの子会社だったが、八六年にチェスコムが経営危機に見舞われグループが解体された。CSK創業者の故大川功がベル社を傘下に収め、三和銀行(現UFJ銀行)OBの園山征夫を社長に送り込むなどテコ入れが功を奏して九九年十一月には東証一部に上場。さらにアウトソーシング(業務の外部委託)ブームに乗って急成長したコールセンター市場でシェアを拡大して業界トップに躍り出た。ベル社社長の園山と、大川亡き後のCSKの最高実力者となった会長の青園雅紘は以前から不仲が噂されたが、持ち株売却に伴って青園はベル社取締役も辞任する意向を示し、ベル社と園山は名実ともに「自立」を勝ち取った。

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