アフリカはBOPビジネスの最前線-味の素の挑戦

執筆者:平野克己2011年1月10日

 縮小する日本市場から勇躍して海外市場を開拓する、そのひとつのフロンティアとしてBOPビジネスが注目されている。BOPとは「所得階層ピラミッドの底(ボトム)」という意味で、一般に「年間所得3000ドル以下の40億人」といわれる。
 彼らを顧客とするビジネスがたいへん有望で、しかも意義深いものだという卓見は、ミシガン大学のプラハラードとコーネル大学のハートによって1999年に発表された。2004年には、有名なプラハラードの著作『BOPへの恩恵:利潤を通じた貧困削減』(翻訳邦題は『ネクスト・マーケット』)が出版されている。

 BOPビジネスを成立させるカギは「BOPペナルティ」にある。BOPペナルティとは、貧困であるがゆえに負わされている追加的コストのことだ。
 貧困というとまず低所得と定義されるが、貧困にはもうひとつ高コストという側面がある。安くて豊富な商品は優れた生産者しか提供できない。低開発状態では、品質に劣る商品を、少なく、高価にしか入手できないのである。さらに最底辺層は、身近に店舗がないため商品にアクセスするのに時間とコストがかかり、手元資金に余裕がないから、まとめ買いもできない。プラハラードは、同じ商品を購入するのにBOP層は、富裕層に比べて5倍から25倍のコストを支払っているといっている。
 この追加的コストをイノベーションによって削減し、さらに利益に転換する-これがBOPビジネスである。BOPビジネスによって貧困層は高品質の商品を従来より安く入手できるようになるので、少ない手元資金の価値を大いに高め、購買力が上昇して、厚生水準が向上する。つまり、“消費における開発”が実現する。経済活動は生産と消費によって構成されているが、これまで開発は生産面と所得面だけをみてきた。BOPビジネスの登場によって初めて、消費面での開発が顕在化したのである。

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