中東での秘密工作練り直しを迫られるCIA

執筆者:春名幹男2011年2月15日

 エジプト市民の蜂起で舞台を去ったホスニ・ムバラク前エジプト大統領の辞任劇を見て、5年あまり前にイスラマバードで会ったパキスタン情報機関、3軍統合情報部(ISI)のハミド・グル元長官の話を思い出した。
「西はモロッコから東はインドネシアまで、イスラム圏で自由な選挙をやれば、反米政権が続々誕生する」
 米国に対する痛烈な皮肉だったが、ムバラク前大統領も今、同じようなことを考えていることが、ひょんなことから明るみに出た。
 グル氏は1980年代、ソ連軍のアフガニスタン侵攻に対して、サウジアラビア総合情報局(GID)とともに、米中央情報局(CIA)の秘密工作に協力した。彼の当時のカウンターパートは、当時のGID長官だったトゥルキ王子とウェブスターCIA長官だった。グル氏はムジャヒディン(イスラム戦士)を訓練し、武器を供給。ソ連軍を撤退させた立役者の1人になったが、イスラム原理主義に近い彼は今、反米の側に付いている。
 イスラム圏の親米独裁政権は、冷戦時代には反共、21世紀は反テロという米国の戦略に協力してきた。しかし今、自国民からレッドカードを突き付けられ、退場を余儀なくされ始めたのである。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。