移民法改正問題とヒスパニック票の行方

執筆者:足立正彦2011年4月26日

 先週、バラク・オバマ大統領は遊説と政治資金集めパーティー出席のためにカリフォルニア州を訪れた。サンフランシスコ郊外のパロアルトにある米ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)大手のフェイスブック本社では、同社の若きCEOのマーク・ザッカーバーグやCOOのシェリル・サンドバーグらとともに対話集会に臨んだ。対話集会の中でオバマは大統領在任中に何としても成し遂げておきたい、現在棚上げ状態になっている重要課題の一つとして移民法改正問題を挙げた。

 2008年大統領選挙キャンペーンでは、オバマはメキシコとの国境警備の強化を図ると同時に、不法移民が米国内で法的立場を取得できるよう移民法改正に取り組む方針をヒスパニック系有権者に対し公約していた。2008年民主党大統領候補指名獲得争いでは、ヒラリー・クリントン上院議員(当時)との間でオバマは熾烈な争いを展開し、各州予備選挙、党員集会ではヒスパニック系有権者の多くがクリントンを支持していた。だが、2008年大統領選挙ではヒスパニック系有権者の実に67%が民主党大統領候補であったオバマに投票している。

 オバマは包括的移民法改正を支持するとともに、米国内の不法移民に対し米国の市民権を付与する道を拓くことにも支持の立場を明確にしている。また、昨年11月の中間選挙後のレイムダック会期では、学歴等の一定条件を満たした不法移民の未成年者に在留資格を与えるDREAM法案が不成立となったが、オバマは同法案を支持していた。オバマ政権が発足してから既に2年3ケ月余りが経過したが、移民法改正問題には殆ど進展が見られない。そのため、移民法改正を支持する組織、団体の指導者や関係者からは、オバマは公約を実現していないばかりか、米国内の不法移民の取り締まりは一層強化され、次々に国外に強制退去させられているとして強い不満が表明されており、オバマの移民法改正への取り組み姿勢も厳しい批判対象となりつつある。カリフォルニア州へ遊説に出発する前日の今月19日にオバマはホワイトハウスで移民法改正を支持する各種組織、団体の指導者らと協議を行うとともに、移民法改正を実現するための今後の戦略分析に着手している。

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