5月24日、合同誕生会で握手する民主党の小沢一郎元代表と渡部恒三最高顧問 (C)時事
5月24日、合同誕生会で握手する民主党の小沢一郎元代表と渡部恒三最高顧問 (C)時事

 5月10日午前、衆議院第2議員会館で、民主党政策調査会の経済産業部門会議メンバーと東海地区選出の国会議員団の計約40人が合同会議を急遽開催した。会議には海江田万里経済産業相も招かれた。経済産業と東海地域の両組織メンバーが集まるということは、議題は当然、中部電力浜岡原子力発電所の停止問題である。  春の大型連休中の5月6日夜、菅直人首相は突然、浜岡原発停止を中部電力に要請すると発表した。合同会議では、この件に関して、東海沖地震や津波への対応をはじめとして、停止による中部地方の産業の冷え込みと電力料金値上げの可能性、他の原発停止への波及、他地域や海外への工場移転の懸念などについて、侃々諤々の議論が交わされた。  ただ、出席議員からの質問や不満の声が集中したのは、停止にまつわる災害や経済の問題ではなく、決定プロセスについてだった。原発によって多方面での影響を受ける東海地区の議員にも、エネルギー問題にかかわる経済産業部門の議員にも、一切事前連絡なしで浜岡原発の停止要請が決定されたからだ。

「1年以内に首相退陣」という側近発言

 会議終了後、中山義活経済産業政務官が同僚議員にぼやいた。
「俺さあ、テレビで知ったんだよ」
 そう打ち明けられた若手議員は呆れてこう答えた。
「ダメですよね。こんなやり方してちゃ」
 原子力行政を取り仕切る経済産業省の政務三役である中山氏さえ知らぬ間に、浜岡原発停止は政治決定されていたのだ。会議では議員らの抗議に対して、海江田氏が「不満なり意見があることを重く受け止め、今後は事前、事後含めてしっかり説明していきたい」と回答したが、議員らの不満は収まっていない。
 各種世論調査では、浜岡原発停止の決断は高い評価を得ている。内閣支持率も東日本大震災発生後はそれほどの落ち込みをみせていない。だが、支持率を下支えしているのは、大震災という国家的危機に際して「急流で馬を乗り換えるな」という実に消極的な理由である。国民は、菅首相を交代させたり政争でゴタゴタしたりという暇はないとは思っているが、菅首相を積極的に擁護しているわけでもないのだ。
 民主党の内実も同様である。浜岡原発のエピソードに象徴されるように、菅首相の政治手法や能力について疑問視する議員は多い。しかも、その空気は首相側近にも広がっている。
 5月17日夜、東京・赤坂のバーで、菅首相にきわめて近い寺田学前首相補佐官が、首相と微妙に距離を置く玄葉光一郎政調会長とグラスを傾けた。話題は首相退陣にも及んだ。店から出てきた玄葉氏はほろ酔い加減で、取り囲んだ記者にこう言った。
「どのくらい菅政権が続くのかなと。僕と彼の読みは1カ月くらいしかずれてなかったね」
 寺田氏はその翌々日の新聞に掲載されたインタビュー記事で、菅首相の退陣時期について、「具体的には、来年度予算にメドが付いた頃でしょうか」と明言している。
 自民、公明の野党両党と、民主党内の小沢一郎元代表らのグループが主導してきた現在進行中の「菅降ろし」に対して、首相側近の寺田氏と、菅執行部の一員であり菅内閣の閣僚でもある玄葉氏は批判的にふるまってきた。だが、その両氏でさえ、これから1年以内に菅首相は退陣するべきだと考えているのだ。つまり、退陣時期が早いか遅いかは別として、民主党内では、菅首相以外のほとんどすべての議員が、菅首相は代わった方がいいと思っているということになる。

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