ヨーロッパ事情への洞察力

執筆者:渡邊啓貴2011年9月7日

 日本はすでにグローバル・プレイヤーとして世界で認められている。通貨・経済・ハイテクなどの面でのグローバル化と日本の世界での存在感は誰しも認めるところであろう。しかし経済に限らず、政治・外交・安全保障分野でも主要国の外交対応はグローバルな視野からのものでなければならなくなっていることも確かである。日本が例外でいられるはずはない。EU共通防衛政策としてインドシナ・アチェに警察活動の任務の文民活動支援が行なわれたことは今では驚くべきことではない。

 冷戦終結後の1996年、当時のクリントン大統領が来日し、普天間飛行場の返還と日米同盟の範囲のアジアへの拡大(再検討)を表明した。その直接的なきっかけは沖縄での女子小中学生に対する海兵隊員と海軍兵の暴行事件であったが、戦略的にはアメリカの世界的な同盟関係の中で太平洋同盟の見直しの順番がめぐってきたからであったというのがより正しいであろう。

 アメリカにとって最も重要な同盟パートナーはイギリスをはじめとする西欧諸国である。だが、アメリカの大西洋関係と太平洋関係はまったく別のものではない。冷戦期にはアメリカの軍事力によってその安全を保障されていたヨーロッパが冷戦終焉後その防衛上の自立性を主張するようになり、米欧間での調整が必要となった。そしてその妥協が正式に成立したのは1994年初めのNATO首脳会議であった。アメリカの日本へのアプローチはその少し前から積極的となったのである。

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