米国は台湾にF16を売らない

執筆者:野嶋剛2011年9月8日

台湾の空軍は、米国製のF16、フランス製のミラージュ、自主開発のIDF「経国号」の三種類の戦闘機を保有して、台湾海峡の最先端で中国空軍と向き合ってきた。歴史的に、台湾海峡における空の優勢は、1949年の中台分断以来、台湾側は一度も中国に譲ったことはなく、それこそ、蔣介石の妻・宋美齢が空軍の指導者として米国から戦闘機を調達し、激しい訓練で練度の高いパイロットを養成することで、人民解放軍の空軍を寄せ付けない伝統を誇ってきた。

現在の三種類の戦闘機はいずれも1990年代に調達されたか、調達が決まったもので、世代的には一世代前のものばかりである。中国が導入を進めるソ連製スホイや自主開発「殲」シリーズに対抗するうえでも、米国からF16のアップグレード版であるC/D機をどうしても売ってほしいと台湾は考えてきたし、米国内でも台湾海峡の軍事バランスを重視するグループ、例えばアーミテージらの一派は強く、台湾側への売却をサポートしてきた。

しかし、現状から言うと、ほぼ希望はゼロに近い。先日台湾で会った馬英九政権の高官は「期待は抱いていない。F16がだめなら、ほかに中国が嫌がるような武器を『おわび』がわりにたくさん売ってほしいものだ」と投げやりだった。

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