リビア利権を漁るヨーロッパ諸国の角逐

執筆者:渡邊啓貴2011年9月15日
8月24日、リビアのジブリル国民評議会暫定首相(左)をパリのエリゼ宮に迎えたサルコジ仏大統領 (C)AFP=時事
8月24日、リビアのジブリル国民評議会暫定首相(左)をパリのエリゼ宮に迎えたサルコジ仏大統領 (C)AFP=時事

 8月下旬、リビアの首都トリポリが反政府軍の手に落ち、42年間に及ぶカダフィ長期独裁政権は終焉した。そして9月1日にはパリで約60カ国・機関が参加した、新生リビア支援国際会議が開催された。  この復興支援会議は英仏のイニシアティブで行なわれた。リビア空爆の前面に立った両国の面目躍如であった。サルコジ仏大統領は、「近隣地域の均衡と平和に自ら関わることはヨーロッパの義務である。そしてこれは旧ユーゴスラビアでの何年か前の出来事に対する前進である」と誇らしげに語った。この空爆の背景にあるヨーロッパご都合主義的な正当化の議論についてはすでに本サイトで述べたが(2011年3月24日「リビア空爆に踏み切ったフランスの『危うい正義』」)、地中海の南北両岸の関係はそう簡単に変わるものでもない。リビア復興の大義名分はそれとして、水面下でのやり取りには相も変わらず、懲りない面々(欧州諸国)の思惑がちらつく。  リビアの支援会議の大きな特徴は、アフガニスタンやイラクの復興支援と違って、自己資金での復興であるという点である。リビアのアブドルジャリル国民評議会議長もジブリル暫定首相も胸を張って会議に臨んだ。カダフィ時代の在外資産は推計1600億ドルもあるといわれており、すでに8月末には米英での凍結資産約30億ドルの解除が始まり、フランスも近々在仏資産の凍結解除をする方針だ。パリ支援会議でも在外凍結資産の解除を急ぐことで合意ができた。しかし、復興のための資産の運用については200近くにもなるという部族間の対立があり、内戦で実質的に生産停止となっている原油生産の再開をめぐる欧州各国の間での角逐がある。さらに治安維持の回復実現など今後の課題は多い。そこでヨーロッパにはどんな役回りがあるのか。

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