「ヨーロッパ化されたドイツ」再考

執筆者:佐藤伸行2011年11月7日

 「星印が幾つも付くような高級料理を前にした、大衆酒場の口げんかのような激しいやりとり」(独誌シュピーゲル)――。欧州財政・金融危機の震源地ギリシャのパパンドレウ首相が表明した欧州連合(EU)の支援をめぐる国民投票計画をめぐり、独仏両首脳が11月2日にパパンドレウ首相と行った緊急協議は、外交辞令をかなぐりすてた歯に衣着せぬ言葉の応酬だったと伝えられています。メルケル独首相とサルコジ仏大統領という欧州を牛耳る両巨頭から膝詰め談判され、厳しく叱責されたとあっては、名門政治家一族3代目の「お坊ちゃま首相」であるパパンドレウ氏はひとたまりもなく、国民投票実施を断念した経過は周知の通りです。

 ギリシャ危機は今後どう転ぶか、まだまだ予測不能ですが、ただ、今の欧州危機の渦中に浮かび上がるドイツとその指導者メルケル首相の姿を眺めると、ヨーロッパとドイツはついに一体化し、「ドイツのヨーロッパかヨーロッパのドイツか」という古典的な二律背反の設問を突き抜けてしまった感があります。つまり、ドイツはヨーロッパ化され、そしてヨーロッパはドイツ化されつつあり、その相互作用が欧州の針路を決定する力学の一つになっている段階に来ているのです。

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