ダーウィンで演説するオバマ大統領(右はギラード豪首相)(c)EPA=時事
ダーウィンで演説するオバマ大統領(右はギラード豪首相)(c)EPA=時事

 これを「オバマ・ドクトリン」と呼ぶことになるのだろうか。アメリカが「太平洋国家」として明確に位置づけられた。ホノルルでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議にはじまり、インドネシア・バリ島での東アジアサミットまで、9日間に及んだオバマ大統領のアジア太平洋歴訪。ハイライトは、「太平洋国家」を宣言したオーストラリア議会での演説だ(11月17日)。その前日に米海兵隊の北部豪州ダーウィンへの駐留計画が正式発表された。さらに、大統領の歴訪終了後にはクリントン国務長官の歴史的なミャンマー訪問。同国民主化へ向け米国の後押しが本格化した。ダイナミックな新アジア戦略が動きだした。

「自由拡大路線」の表明

 海兵隊駐留計画発表も、国務長官のミャンマー訪問も、明らかに中国をターゲットとした動きだ。環太平洋連携協定(TPP)も日本の交渉参加表明で活気づいた。シンガポール、ブルネイなど4つの小国から始まった協定が、中国主導の東アジア経済圏形成に対抗し、アメリカの強い意志を示す構想へと変貌している。
 オバマ大統領のオーストラリア議会での演説は、アメリカが「太平洋国家」であると宣言し、アジア太平洋の安全保障は「最優先課題」であると断言する。 【Remarks By President Obama to the Australian Parliament, Nov. 17, The White House】この演説は、ブッシュ前大統領の中東民主化演説にも劣らない「自由拡大路線」の表明でもあった。オーストラリアとアメリカは、太平洋戦争だけでなく、朝鮮戦争、ベトナム戦争……で、ともに血を流し、アジアに民主主義を根付かせ、今日の繁栄をもたらしたと振り返る。「歴史を見れば明らかだ。結局は、民主化がなければ経済成長はない。自由のない繁栄は、形を変えた貧困にすぎない……歴史は自由な者たちの側に立つ。自由な社会、自由な政府、自由な経済、自由な人々の側に立つ」。中国への強烈なメッセージだ。 

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