オバマ政権の新国防戦略とアフリカ

執筆者:白戸圭一2012年1月6日

 もし、仕事をしているにもかかわらず、4年3カ月の間、1円の給与も支払われなかったらどうだろう。現在の日本で、あるいは普通の日本人が仕事や観光で訪れる外国で、そのような事態はまず有り得ない。そんなにも長い未払いが続く前に、誰もがその職場を去っているに違いない。その企業を相手に裁判を起こしている人もいるだろうし、場合によっては司直の手が入っているだろう。

 だが、サハラ砂漠以南では、こういうウソのようなことが本当に起きる。2008年3月に訪れた中央アフリカ共和国がそうだった。米国の民間研究機関The Fund for Peace が毎年公表している「破綻国家ランキング」のワースト10常連国である。筆者はそこで反政府勢力と接触し、ゴリラなど野生生物の密猟の実態を取材した。

 中央アフリカの政治・社会秩序の崩壊ぶりを、平均的な日本人にイメージしてもらえるように手短に説明するのは困難である。アフリカ各地の紛争地で何度も死ぬような思いをしてきた国連人道支援機関のベテラン職員は「これまでに何度もどん底の貧しさを見てきたが、国全体がこれほど過酷な状態に置かれた国は見たことがない」とこぼしていた。筆者も同感である。首都の1泊100米ドルのホテルに泊まったが、電気が来ていない。発電機はあるが、燃料がほとんどないので1日2~3時間しか動いていない。水道の蛇口はあるが、水は出ない。部屋の水洗トイレに溜まった汚物を流すには、近くを流れるウバンギ川の水を汲んできた。

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