全く対照的な2人の指導者の死をほぼ同時に見て、2011年は終わった。金正日(12月17日死去)とヴァツラフ・ハベル(同18日死去)。一方は全体主義の悪夢の象徴であり、他方はその悪夢との戦いの象徴であった。2人の死を前触れにして、世界は指導者交代が相次ぐ2012年を迎えた。激動の年となるのか、あるいは指導者交代でどの国も身動きがとれず、静かな年となるのか。すでに終わった台湾総統選挙を皮切りに、ロシア大統領選(3月)、フランス大統領選(5月)、アメリカ大統領選(11月)、韓国大統領選(12月)……。そして秋の中国共産党大会では胡錦濤に代わって習近平が総書記に選出され、中国指導部の交代が始まる。
 年末の2人の指導者の死は、時代が抱える問題を教える。全体主義の圧制の下で飢えと恐怖の日々を送る人々が、依然、放置されたままだ。英誌「エコノミスト」によれば、おそらく北朝鮮国民の20人に1人が一度は強制収容施設に放り込まれた経験がある。いまも推定20万人が収容されている。体制を支持している国民はせいぜい5-25%。半数から4分の3は揺らいでいる。8-27%は敵意さえ抱いている。金正日はそんな実態を知っていた。自分に向かって称賛の言葉を叫ぶ市民を見て「どうせウソだ」とつぶやいたことがある。「エコノミスト」は、独裁者の猜疑と孤独を追悼記事で描いた。 【Kim Jong Il, The Economist, Dec. 31】

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