いま、中国をドイツのメルケル首相が訪れているが、ちょうど欧州の金融危機のまっただ中であるだけに、中国側がどんな対応を取るのか、注目されていた。ドイツは中国にとって欧州で最大の貿易相手国であり、中国に対する投資が欧州で最も多い国でもある。

メルケルは訪中中にリベラルな報道で知られる「南方週末」を訪れようとして断られたり、人権派の弁護士に会おうとしたりして、それなりに中国政府を困らせてはいたが、カウンターパートになった温家宝とは、首相としての訪中が五回目とあって、二人はけっこう打ち解けた雰囲気だったようである。

 欧州の債務問題については、3兆ドルの外貨準備を持つ中国の支援の動向が注目されているが、温家宝はかなり慎重な物言いに終始していた。IMFを通じた支援程度しか具体的な言及はなかった。1990年代のアジア通貨危機に見せたときのように「私たちが救いに行きます」といったタイプの言動にはなっていないところが、より、今回のメルケル訪中ではっきりしたような印象だ。

欧州は中国の最大の貿易相手で、欧州の失速は中国の失速につながりかねないという危機感はあるが、アジアのときと違って、欧州という先進国を中国が支援するということへの大義名分が経済力の面からも地域的な面からも、十分に立たないところもある。

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